“残念な改革”はなぜ生まれてしまう?
こんにちは、Mです。今年も年の瀬が近づいてきましたね。
年末や年度末など、通常業務が一区切りつくタイミングになると、仕事のやり方を見直そうと業務改革の声があがることがあります。
うまくいき、業務効率や生産性が上がるととてもハッピーなのですが、なかには今より良くならない、かえって苦労が増えるような“残念な改革”を目にすることも少なくありません。
“残念な改革”は、最初の案の段階から、なにやら怪しい臭いを放っていることが多いようで、それを発案する人がやりがちな特徴をまとめてみました。
(1)目新しいものに飛び付く
「ビッグデータ」「AI」「IoT」「RPA」などなど、新聞や経済誌の見出しを賑しているようなビジネスのトレンドワードがありますが、そういった言葉が使われているサービスやツールを目にすると「これ、ウチの会社にいいじゃないか!」と、その場で部下達にメールを投げるような方がいます。
“新しい”ということで、現状より良くなるというイメージで反射的に体が動いてしまうのでしょうか。「それが本当に自社に合っているのか?」や「現状の方法よりも良いものなのか?」という面はさておきで、勢いに乗って話を進めてしまいます。
結果、パフォーマンスが上がらなかったり、業務内容とマッチしていなかったり、というのはよくある話。
ちなみに、そのネタは実はもう新しいものでもなく、世間ではすでに欠点なども指摘されまくっている、ということもありがちです。(発案者当人はそこまで調べていない…)
(2)中身がやけにふわっとしている
改革の詳しい内容が見えず、耳障りのいい言葉だけでふんわり包まれているケースです。
「システム化」「統合」「クラウド」などのワードで出てくると、このケースの兆候かなと思ってしまいますが、実際の業務プロセスの中のどこを「システム化」し、どこからどこまで「統合」し、どの部分を「クラウド」にするのかを尋ねると「それは追い追い検討で…」と言葉を濁します。
また、「『これによってユーザー満足度が上がる!』と言って出されたプランは、業務側の手間や費用などがバカ高くなることに触れられていない」ような、部分最適で思考停止しているパターンもあります。
(3)やたらホームラン狙い
ここでも「システム化」はよく出てくるネタですが、それを導入することで業務全体のパフォーマンスが何倍も上がるようなことを謳います。
現状をドカンと変えて大きな成果を一気にゲットする夢を描くこの方は、ふだんの業務の中で日々行われている小さな工夫や改善にはあまり興味をしめしません。
改革を実行するときも、部分的に試行するスモールスタートではなく、最初からどかっと全部を変えたがります。
彼らは、アイデアを思い付いた時点ですでに、改革が成功した時の自分への賞賛という妄想に酔っているのかもしれません。
(4)現場のことを驚くほど把握していない
残念な提案を出してくる人は、現場のいまの状況をあまり把握していません。
本人は自分が把握できていると思っているけれど、それはもうかなり昔の状況・やり方だったり、その人が思うよりずっと複雑かつ臨機応変なことが現場では行われていたりします。
現場の社員に一声かけてくれれば、その提案がナナメ上だということもすぐわかるのに、そういった現場の話をなぜか聞こうとしないのも特徴です。
思いつきでアイデアだけ並べますが、計画に落とし込んだり、実施・浸透させていくなどの骨が折れる仕事は現場に丸投げ、という有様も目立ちます。
(5)「現状=悪」と位置づける
現状の問題を解決していくのは正しい姿勢ですが、何か一つの問題があるだけで現在のやり方全体が間違っていると騒ぎだし、大がかりに変えてしまおうとする方もいます。
往々にして、ものごとには良い面と悪い面が両方あり、それらのバランスを考慮したうえで現在のやり方が成り立っています。
「マイナス面はあるけど、いちばんベターな方法なので、現状そうしている」というのが現場の見方ですが、改革発案者はそれを「問題があるのに放置している」と捉えてしまうのです。
あげく「問題を放置している現状=悪」「改善の指示に従わない現場社員=抵抗勢力」という、まるで自分がヒーローになったような心地よいストーリーを頭の中に描いて、より声高に改革を叫ぼうとするのです。
以上、会社の中の“残念な改革あるある”をお送りしてきましたが、よく考えたら、これらは中小企業診断士が経営者さんに提案する時に気を付けた方がいい点でもありますね。。。
変えていくことはとても大事ではありますが、
■そもそも変える必要があるのか?
■今のやり方はどういう経緯で成り立っているのか?
■改革を実施した結果、得るものはなにか?
■改革を実施した結果、失うものはなにか、それは取り返しがつくものか?
などのことを、いったん落ち着いて考えてみてから、進めていきたいものです。