部屋に壁紙が舞い落ちる事案の始末記
こんにちは。オレンジ色のユニフォームです。
今回はボクの単身赴任先で起こった奇妙な事案の紹介です。
ある日、会社から単身赴任先に戻った時、小さなゴミのようなものが部屋に落ちていた。
つまんでよくみてみると、壁紙の破片のようだった。
おそらく、意図せず壁紙に接触したとき、その破片がはがれ落ちてしまったのだろう、
と、勝手に思い込んでいた。その時は。
ところが、壁紙の破片が落ちている状況は変わりなかった。
しかも、徐々にその数は増えてきていた。
どこの壁紙が原因となっているのか。ボクは時間をかけて調査をした。
1Kのワンルームマンションなのでくまなく調査した。
しかし、どこもおかしいところはなかった。
その時、ピンときた。
もしやこの部屋ではなく、どこかほかのところから入り込んできたのかも。
イヤな予感がした。
そうこうしているうちに、壁紙の破片が落ちている範囲が広がってきた。
最初はパソコンとテレビを置いてあるデスクの付近に集中していたが、
徐々にそのほかの場所にも拡大していった。
そして、とうとうバスルームにも落ちているのを発見した。
上を見ると換気扇があった。
また、ピンとした。
「もしかしたら、他の部屋から、この換気扇を通じて壁紙の破片が運ばれてきているのではないか」と仮説をたてた。でもなー、という思いはあった。だよねー。
さすがにこのまま放置しているのはマズイと思い、マンション管理会社にメールで状況を伝えた。
その際、落ちていた壁紙の破片を2つほど撮影して添付しておいた。
すると、すぐに返信があった。業者に連絡したので調査に向かわせる、との内容だった。
業者の方から電話があり、単身赴任先に実地調査に来てもらえることになった。
いつも実家に戻る土曜日。約束した時間通りに業者の方が1名でやってきた。
早速、実際に落ちている現場をみてもらった。
業者の方は壁紙の破片をつかみとり、目を凝らしてみていた。
「んんん~、たしかにコレは壁紙ですね」と業者の方はつぶやいた。
でしょ、とボクは心の中でつぶやいた。
そして、自分の仮説を業者の方にブツけてみた。
「もしかしたら、他の部屋から、バスルームの換気扇を通じて壁紙の破片が運ばれてきていることはありませんか」
すると、業者の方は、やおら、バスルームの天井にある換気扇をあけて、天井裏のようなところに顔を突っ込んだ。
「んんん~、なにもないなぁ」と業者の方はニガニガしくつぶやいた。
業者の方は、落ちているところをすこし確認した後、
「ほかの部屋の方にも聞いてもらうようにします」「あと、この壁紙の破片はもらっていきますよ」と小さいビニール袋に入れて持ち帰った。
なんとなくボクの仮説が正しかったような気がしてきた。
数週間後、ドロンチョ様(ボクの妻)が単身赴任先にやってきた。
ボクは得意になって、壁紙の破片をみせ、そして、ビル管理会社へ連絡したこと、業者の方が来て現地調査に来てくれたことを伝えた。
「まぁそれは大変だったね」「でも適切な対応ができてよかったね」
との反応があると思っていた。
しかし、ドロンチョ様は眉間にしわを寄せて
「あなた、大ボケしていないわよね」「ほらソコは大丈夫?」
と、言うや否や、ボクの履いているスリッパを指さした。
「スリッパ?」「なんで?」「スリッパだよ、壁紙じゃないよ」
「だから、そのウラは大丈夫なの」
おそるおそるスリッパを抜いてひっくり返してみると、スリッパの裏はボロボロになっていた。
そして、そこに切れかかっていた小さな破片をみつけた。
まるで壁紙の破片のように
(了)